力学の入門 : 6 「運動量」

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GRAM
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力学の入門 : 6 「運動量」

投稿記事 by GRAM » 13年前

[1] 運動量
 単に運動量といった場合、それは端的に言ってしまうと
 「質量mと速度vとの積」 のことです。

 p = mv

もちろんここでpとは運動量を指します
 これが一体何の役に立つのかというはなしですが、(ぶっちゃけなんにでも役に立ちますが、)
 まずは次の力積という概念と、運動量保存則を見てみましょう

 さて、前々回の運動方程式ですが、運動量を用いて次のように書くこともできます
 さらにその運動方程式を時間tで積分すると次のようになるでしょう。

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 ここで力を時間積分したベクトルφを 「力積」 と呼ぶことにします。
 力積の大雑把なイメージは、力を一定に保ってトロッコを押すことを考えることでつかめるかと思います。
 つまり静止しているトロッコに一定の力を加えてある一定時間押し続けると、トロッコはある速さに達します。
 トロッコを同じ速さまで素早く加速するためには(つまりt2-t1を小さくするためには)ちからFを大きくしてやればよいのです。
 また逆に力Fが小さくても長時間押し続ければ、いずれ同じ速さに達します。
 質量が大きければ、その速さにおける運動量も大きくなるので、力を大きくするか、長時間押し続ける必要があるでしょう。
 結局この力×時間の値が運動量の変化と等しいと言えるわけです。

[2] 運動量保存則
 
 さて、運動量変化はその物体に与えられた力積と等しいことは述べました。
 いまここで2つの物体が衝突することを考えてみましょう

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 衝突すると、二つの物体には瞬間的にみると向きが真逆で大きさが全く等しい力が働くことになります。これは作用反作用の法則で知られるものです
 とすると、その力を時間で積分した力積もまた、大きさが同じで向きが真逆となることが分かるでしょう
 つまり次のようになります

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 ここで出てくる最後の式に着目すると
 二つの物体の運動用の和は、衝突の前後で変化していないことがわかります。
 このことはとんでもなく便利です。ちょっと突っ込んでみます。今二つの物体の運動のみを考えました。
 衝突では考えている二つの物体の間で力のやり取りがされ、外部から力を与えたりはしていません。
 このような系内部でつりあう力のことを「内力」といいます。一方系の外部から力を与えるときその力を「外力」といいます。
 もちろんこの場合の作用反作用による力は内力になります。 
 今上の式から次の運動量保存則が導かれました。
 
 物体に内力しか働かないのなら、系の運動量は保存する

 これは逆に言えば、衝突後の運動の一方が分かっていれば、
 もう一方の衝突後の運動は衝突の間にどんな力のやり取りがされていようが決定されるということを示しています。
 もちろん運動量保存則は2つの物体間にとらわれず、系に無数の物体があっても成り立ちます。
 運動量保存則を使えば、たとえ内力がどんなものだったとしても、全体の運動量自体は変化しないことがわかります。
 つまりたとえば衝突についていえば、衝突前と衝突後のみに着目して、間で起こった出来事(たとえば球がゆがんでもう一方の球を押し出して・・・)
 をある程度無視してしまう・・・ということもできるわけです。

[3] 重心系

 さてここでもう一歩進んで次のことを考えてみます
 まず物体の重心というものを定義しましょう
 重心とは次のように、各質点までの距離と質量との積の総和を各質点の質量総和で割ってやることで導出されます。
 わかりやすくいえばつりあいの位置のことですね。
 さてこの重心と、先の運動量保存則を使うと面白い結論が導かれます
 
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 最後の式が言ってることは次のようなことです

 運動量が保存するならば、重心は等速直線運動する 

 このことはいつも便利とは限りませんが、いくつかの場合で非常に役に立ちます。
 じっさい一見複雑そうに見える運動でも、重心が等速直線運動するように整理してやることで、とらえやすくなることはしばしばあります。
 たとえば前回のばねの運動についても、各系で重心の位置は不動になるように(つまり重心の運動量が0になるように)初期位置を決めました。
 そうすることで各質点を常に画面の中央に配置することができています。
 重心系とは重心を基準とした相対座標のことです。重心系を用いることをで、上記のような利点が生まれます。具体的には次回試してみます。

次回は実際に衝突をシミュレーションするプログラムを書いてみます。
そのなかで運動量保存則や重心系を用いて行きます。
最後に編集したユーザー GRAM on 2012年9月16日(日) 23:10 [ 編集 4 回目 ]

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